なぜ運送会社は倒産するのか

事業規模を大きくして利益なき成長に追いやられた運送会社は改善ではなく改革をしなければ割と早いスピードで淘汰されていく時代なのかも知れない。

軽貨物委託会社も例外ではないだろう。

大手宅配会社ドライバーあがりで軽貨物会社を立ち上げて昔の会社の同僚ドライバーを引き抜いて働かせるなどしてなんちゃって起業家を気取っている感じの会社も見受けられるが、実際、経営者が全く軽貨物車のハンドルすら握らなくなって本業から外れた金儲けを始めて失敗するパターンもあるあるな話。

そりゃそうだ。

ドライバー人数をそこそこ抱えている軽貨物委託会社の経営者は自分の経営能力で飯を食っているのではなく、委託ドライバーの労働運賃で飯を食わせてもらっている立場。自分に経営能力があると勘違いをして天狗になってドライバー教育とはなんぞやと躍起な経営者がいるのも妙な話。

名のある軽貨物委託会社はドライバー教育がドライバーのためではない。

ハンドルを握らない経営者のいる軽貨物会社のドライバー教育の意味=どうやって委託ドライバーに自分が飯を食わせてもらえるか。

これを踏まえると会社の利益のために働く社員教育と同じ感じになる。

軽貨物運送業界は良くも悪くも日本経済の川下にある底辺が事業領域。

軽貨物会社も同様、人数を抱えた運送会社に染みついた仕事姿勢の空気感や温度感は簡単には変えられない。

ドライバー教育の話とドライバーの質を口に出す軽貨物会社ほど現実は委託ドライバーをロボットのように働かせて壊れないように長く使おうとする。それ自体は正解とも言えるがいちいち教育にチカラを入れているとか質を大事にしているとかは口に出すもんじゃない。

その結果、わかっちゃいるけど、そうは言っても、といった言動の倉庫スタッフやドライバーが見られる物流会社や運送会社が生まれてしまい利益なき成長もしてしまう。

不良学校が進学校に生まれ変わるには様々なプロセスを経て最低でも数十年がかかるのと似ている。

ただ、私はつくづく思うが昭和風とも言える昔ながらの運送屋は魅力的な部分も多いと感じとっている。

AIとかデジタルツールとかじゃなくて単純に頭が悪いからモノを運ぶ仕事くらいしかできないといった運ちゃんスタイルこそが運送業務に於ける信頼の裏付けだと思う。

漢字が苦手、計算が苦手、低学歴であろうとも不義理と裏切りだけは絶対にしないという人間力があるならばそれはかなり立派な魅力である。

もちろん、会社経営となるとそういう直球勝負だけでは生き残れないが、個人事業主ドライバーや小規模な軽貨物運送業者は儲けよりも稼ぎが大事。初心忘れるべからず、不義理と裏切りさえしなければ仕事や事業の基盤はしっかりと整ってくる。

〇〇急便や〇〇運輸などの大手宅配会社に仕事依存している下請け軽貨物会社はネット通販が好調で個人宅配はどんどん伸びているので下請け軽貨物会社も末端の個人事業主ドライバーも業績は右肩上がりなどと語りながら委託ドライバーを募集してきた。

しかしながら大手宅配会社は馬鹿ではない。雲行きが怪しい大手宅配会社の動向や業績を見る限りでも宅配系の下請け軽貨物会社は利益なき成長の余波で倒産情報も増えてくるように思える。

要するにお客様にとって高効率な配送サービスは運送会社にとって非効率な配送サービスである。

あらゆるニーズに対応しようとすれば配送現場では例外処理が更に多くなる。

生き残るのはもちろん川上にいる最大手宅配会社。その最大手が生き残るには下請けや孫請けやひ孫請けの軽貨物会社が犠牲となるは当然の話。

零細企業の軽貨物会社や個人事業主ドライバーが日本のこの資本主義経済で生き残るには「密かな自助努力」しかない。

運送会社や軽貨物会社は明らかに負のスパイラル突入はスケールの失敗から始まる。

事業軸は車のエンジンと同様で事業の回転力が売上の動力となって利益を伝達すると思ってよいだろう。

事業の回転に反作用の抵抗が少しでもあると事業という回転体は振動をするがまだそれくらいならば回転スピードを調整したり人的による反作用をゼロ化すれば振動は落ち着く。

しかし、事業で起きている回転振動を放置するとやがてその振動の遠心力により事業軸のブレが大きくなり軸の回転は偏心してしまう。

何を意味するかというと事業の調子がよいときほど高回転する遠心力で事業内部の軸ブレが知らぬ間に高い確率で発生していることである。

言い方を変えれば良い時も悪い時も事業や会社の背骨を大事にしろというやつである。

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