軽貨物運送を個人で始める上で知っておかなければならないのは商習慣。メーカーから代理店、代理店から販売店、販売店から小売店、小売店からエンドユーザー、といったBtoBの商取引、メーカーからエンドユーザーといったBtoCの商取引。
軽貨物運送業のドライバーが開業して配送業務を始める以前に学んでおくことの一つとして商習慣のことがある。
商習慣はビジネス用語として言葉を学ぶのではなく、軽貨物ドライバーは世の中にいくつかある商習慣の仕組みを知った上で荷主企業様の商品が動く理由を捉えておかなければ、自分に見合った配送案件の受注をいつまでも掴むことができないと考えるべきだ。
大手宅配会社の宅配や大手ネット通販の商品宅配やネットスーパーの配達をするならば「やっつけ仕事」で頑張るだけでどうにかなるかも知れない。
しかし、荷主企業様の営業姿勢にフィットして働く軽貨物チャーターの仕事では、定期便やスポット便を問わず、ビジネスマン的なスキルを伸ばしておかなくては荷主企業様にお世話になってもノウハウのメッキが直ぐに剥がれて通用しなくなる。
所詮、ドライバーだからと思われてしまうのだ。
私が知っている配送現場でも割と高級なお弁当や惣菜などの食べ物を配達する仕事にも関わらず、小汚い作業着や古びた靴で配送業務をしている軽貨物ドライバー、それを黙視している請負管理の軽貨物配送会社も存在する。
品の無い格好で、高級マンションや富裕層のお宅へ商品を配達してしまうわけですから、メーカー荷主様や商品のイメージ低下を招くなど、本当に駄目な配送業者の極み。
未経験者であろうと経験者であろうとそういうプロ意識を持たずに配送がミスなくスピーディにできればそれでいいと思っているようでは個人事業主として話にならない。
ドライバーの身なり格好一つであろうと個人事業主ドライバーであるならばビジネススキルやセンスを持ち合わせた魅力的な軽貨物ドライバーであるべきだ。
社員ではない自営業の軽貨物ドライバーは、この先、クリエイティブにいろいろな荷主企業様の仕事に対応できるよう、様々な商習慣の仕組みを学び、荷主企業様の営業姿勢にフィットできる実力を持つことが、お客様から信頼を預かる基礎となる。
さて、今から20年から25年くらい前、中小零細企業でも販売戦略の見直しで使われ始めた、BtoB、BtoC、という言葉がある。
ざっくり言えば、ルート販売か直販かの違いと感じ取って間違いではない。
最近では軽貨物業界でも言葉遊びで、BtoB、BtoC、を会話する軽配送業者がいるが、そういう人たちの多くは自らが全国販売とかエリア販売とか販売チャネルの構築に取り組んだ経験すらない人たちの会話。
軽貨物配送業者が知ったかぶりで、BtoB、BtoC、を語ると妙に胡散臭くなってしまう。
多くの荷主企業様にとって、BtoB、BtoC、の商取引を事業計画の通りに成功させることはその事業の生命線となる。
もちろん、SCM(サプライチェーンマネジメント)も時代に合わせて変化していく。
もちろんのこと、一つの会社でBtoBとBtoCを一緒くたに営業すると、取引先同士がバッティングしてシナジー効果が生まれないため、繊細且つ大胆に物を売る営業戦略は進んでいるはず。
その辺の軽貨物ドライバーにはこういうテーマは無縁かも知れないが実際にBtoCは商社不要論と結びつく。
事業規模はどうであれ、商社の場合、メーカーとユーザー、川上と川下の間である川中で仕事を柔軟に変化させ、所謂BtoBで分野をまたいで横に連携することによって事業のシナジー効果を改善していく。
事業計画書の作成経験者はドライバーには少ないかも知れないが事業計画書を作成する際は販売ターゲットを明確に示す。
荷主企業様の販売ターゲットと言っても、誰に1番売りたいのか、2番目に売りたいのは誰か、というだけの話。
年齢だったり、性別だったり、エリアだったり、業種だったり、色々ですが、事業で取り扱うメイン商品の性質がベースとなり、その方針は意外にハッキリとしている。
軽貨物ドライバーが運んでいる荷主企業の商品販売事業の行く末には社会貢献という切って切れない大義名分があるが、その部分まで軽貨物ドライバーはタッチできない。
ドライバーの役目役割はあくまで荷物を届けるまで。荷主企業のビジネスモデルへの口出しやお節介は良くない。反発ではなくビジネスを理解する技術が大事。
荷物を出荷販売するような荷主企業の業態は、会社向けの販売が得意な会社様と、個人向けの販売が得意な業態の会社様に大別できる。
BtoBが得意な会社だなとか、BtoCに注力している会社や部門だなとか、客観的に感じ取っておくことも大事だ。
BtoB、BtoC、の過去について、Windows3.1、Windows95や98、そういった時代、大手企業のみならず中小零細企業においてもパソコンによる営業管理や書類管理や売上管理することが始まった。
とは言え、中小零細の会社では当時、ワープロ代わりにパソコンを使っているレベルだったが、Windows95のOSが登場したことにより、電話回線でのインターネット通信が簡素にできるようになった。
もちろん、アナログ接続、ダイヤルアップ接続という環境。
とはいえ、中小零細企業としては仕事上で今まで発想できなかった広域販売の展望が見え始めた時代でもある。
会社ではホームページを作るべきという考えが普及し始めた時代。
地方の小さな会社でも都内で仕事する会社と同じ立ち位置でビジネスチャンスを手にできるようになった時代でもある。
それから、20年以上が経過した今、スーパーなどBtoBの大量物流に比べると、インターネット通販の宅配などBtoCの小口物流が格段に増え、物流全体としては効率が悪くなり、手間がかかる配送ばかりが増えてしまった。
世の中、共働きの世帯が拡大したことで、配達時の受取人不在も多発し、宅配便ドライバーの配送効率は致し方なく低下。
最大手の運送会社であろうとも社員ドライバーを軸とする物流機能の余力はなくなり、BtoCが招いた宅配ニーズの増加に対応ができず、下請け業者や業務委託で個人事業主ドライバーを頼るしか、対応の手立てがない状況下と想像できる。
もちろん、宅配系の仕事は薄利多売のような過当競争に巻き込まれた末、メーカーや荷主企業様からの物流費削減要求にも応じるために、大手運送会社では合理化を進めてきた。
業務委託の軽貨物ドライバーとしては、こういった物流の行く末や我が国の経済状況や商習慣をうまく理解し、どの道の配送業務を好むべきか見つめ直すことも割と大事なことかと思われる。